
ピンポイントでいく。
「家に預けたりつる人の心も、荒れたるなりけり」
(家だけではなく)家を預けておいた人の心も、あれはてていたんだなあ。
古典の訳は、すこし変に感じても、文法を意識して訳すほうがいい。
特に初学者は、意訳をさけたほうがいい。
「中垣こそあれ、一つ家のやうなれば、望みて預かれるなり」
仕切りの塀はあるが、ひとつの家のようなものだから(と言って)、(お隣さんが)望んで預かっていたのだ。
「今宵、かかること と声高(こわだか)に、ものも言わせず」
(出張先から帰ってきた)今晩、こんなこと(に出くわす)なんて(あんまりじゃないか)、と(従者に)大声で文句を言わせたりもしない。

ここらへんが、特に分かりづらい箇所だろう。
貴族は基本的に、マネージャーや衣装係や、その他の係と共に行動する。
貫之も、団体で旅をしてきたわけだ。
従者のなかには、乳兄弟とかで、親友のような間柄もあったりする。
彼らは、口々に「あ〜ヒドイ」とか言っている。その中のひとりがキレて、「近所にも聞こえるように、わざと大声で文句を言ってやりますよ」などと言い出したのかも知れない。
「よせよ、お隣さんは確かに薄情なヤツだが、家の管理を頼んだんだから、礼はしようと思っている・・・」
貫之は、怒りや落胆を胸にしまった。
2月の、月が明るい夜だった。

必ず問われるのが「中垣こそあれ、〜」の文法だ。
「係り結び」の「結び」は、文の終わりという意味。
ところが、そこで文が終わらず、続いていくパターンがある。
これを「係り結びの流れ」という。
めんどうな事はない。
「こそ〜已然形」で文が終わっていなければ、「逆説的に訳す」だけの話だ。
中垣があるからこそ、ではなく
中垣があるのだが、となるわけだ。
以下、つづく・・・